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今さら聞けない?知っておくべき基本の3Dプリント技術6つとは?!

      2015/07/29

皆さんは3Dプリントの仕組みについて聞かれたらきちんと答えることができますか?「3Dプリントといえば、フィラメントを溶かして形を作っていくもの」と思っている方もいるかもしれません。でも実は、全ての3Dプリント用素材がよくあるフィラメント式の3Dプリンタで出力されている訳ではないのです!今回はi.materialiseの3Dプリントに使われている6つの造形法や各素材の違いを解説します。

熱溶解積層法(FDM)

家庭用3Dプリンタでもお馴染み「熱溶解積層法(FDM)」。でも巨大な業務用3Dプリンタで出力するものはやはり家庭用3Dプリンタとは比べ物にならない仕上がりです。

マテリアライズで使用しているFDM式3Dプリンタ。ストラタシス社製のFortus 900 mcです。

マテリアライズ、ベルギー本社で使用しているFDM式3Dプリンタ。ストラタシス社製のFortus 900 mcです。

プロ用FDM3Dプリンタが家庭用の3Dプリンタと大きく異なる点は、造形用フィラメントとサポート材用フィラメントを分けている点。大きく張り出している点などは造形中に倒れてしまわないように、サポート材で支えながら造形していきます。

FDM3Dプリント法の原理

サポート材は本来のデザインの一部ではないため造形後に取り除きます。家庭用3Dプリンタでは手で取り除くことがほとんどのサポート材ですが、特別なフィラメントを用いる産業用3Dプリンタではこれを特別な洗浄剤を入れた液に漬け、溶かして取り除きます。

i.materialiseで提供している素材のうち、FDM式で3Dプリントされる素材はABS樹脂。溶けるサポート材のおかげで、ABS樹脂を使えば機能性と可動性、耐久性のあるモデルを3Dプリントできることができます。

FDMで3Dプリントされた、実際使えるスパナ。強度も高いが表面は粗め。

FDMで3Dプリントされた、実際使えるスパナ。強度も高いが表面は粗め。

ABS樹脂の耐久性は、工業用に型を取って作られるプラスチック製品の80%程度。その他の3Dプリント製品に比べてかなり強いものの、表面は少し粗い仕上がりになるので覚えておきましょう。

レーザー粉末焼結法

プロ用3Dプリント技術の中で最も一般的と言ってもいい「レーザー粉末焼結」を使って提供されているのは、ポリアミドアルマイドチタンラバーライクウッドの5種類。

レーザー粉末焼結法を使いポリアミドで出力したカラフルなスマホケース。

レーザー粉末焼結法を使いポリアミドで出力したカラフルなスマホケース。

3Dプリンタの内部は出力用素材の融点を少しだけ下回る温度に設定されているので、レーザーで少し熱を加えるだけで粉が溶けて固まる仕組み。この温度差を利用し、レーザーで一層ずつ立体の形を描いていきます。 レーザーが当たった箇所の粉は溶けて固まり、その他の箇所はさらさらの粉として残ります。

新登場のウッドを使って3Dプリントしたミニ宝箱。動く蝶番もそのまま一度にプリントできるのがレーザー粉末焼結のいいところ。“Teeny Tiny Treasure Chest” by Lucas Alousis

新登場のウッドを使って3Dプリントしたミニ宝箱。動く蝶番もそのまま一度にプリントできるのがレーザー粉末焼結のいいところ。“Teeny Tiny Treasure Chest” by Lucas Alousis

立体の一層目が完成したら、その層の上にまた薄い粉の層を重ね、レーザーが二層目の形をなぞって…というプロセスの繰り返しによって、モデルを造形していきます。粉を重ねながら造形するので、3Dプリント完了時のモデルは大きな粉のブロックに埋もれていることになります。

粉をレーザーで溶かしながら造形していく、粉末焼結による3Dプリント。

粉をレーザーで溶かしながら造形していく、粉末焼結による3Dプリント。

3Dプリント後、粉の塊の中から取り出されるランプ。Photo by Arthur Los from Milo-Profi studio. Copyright by Flanders Investment & Trade.

3Dプリント後、粉の塊の中から取り出されるランプ。Photo by Arthur Los from Milo-Profi studio. Copyright by Flanders Investment & Trade.

この技術の最大の特長は、造形中にモデルを支えるサポート材がいらないこと!造形中のモデルは固まっていない粉の中に埋もれているので、自然と支えができ、複雑な構造や鎖のように連なったデザインも造形ができます。下のビデオを見るとより想像が湧きやすいかもしれません。

粉末固着式積層法

こちらも粉状の素材をベースにした造形方法ですが、こちらはレーザで固めるのではなく、液状の接合剤を使いながら粉を一層ずつ立体化していく方式です。セラミックマルチカラーステンレススチール高精細ステンレススチールの4種類の素材はこの方法で3Dプリントされています。

ステンレススチールで3Dプリントされた‘Rainbow Dash’ by Ben Scholzen

ステンレススチールで3Dプリントされた‘Rainbow Dash’ by Ben Scholzen

レーザー粉末焼結と同じように、薄い粉の層が敷き詰められた造形機内で出力を開始します。必要な部分だけ粉を固めていくのに利用するのは、レーザでなく液状の接着剤。一層目の粉が接着されたら、また薄い粉の層を重ねて二層目、三層目と層ごとの接着を繰り返します。

造形後オーブンで焼き、ブロンズを注入して仕上げるのがステンレススチールの特徴。

造形後オーブンで焼き、ブロンズを注入して仕上げるのがステンレススチールの特徴。

粉を接着剤で接合しているので、粉末固着式積層法で3Dプリントされた直後のモデルの強度は高くありません。そのため造形後は素材によって様々な加工を施し、強度を補っています。マルチカラーの場合はUVコーティングを施して全体を固め、セラミックの場合は釉薬を塗ったあと窯で何度かモデルを焼きます。ステンレススチールはブロンズを注入して、強度を更に高めます。

光造形

世界で最も古い3Dプリント技術と言われる「光造形」は、家庭用3Dプリンタから巨大な工業用3Dプリンタまで広く応用されています。i.materialiseで光造形に使用するマンモス光造形機はなんと2メートル!

マテリアライズが開発した、世界最大の3Dプリンタ「マンモス光造形機」

マテリアライズが開発した、世界最大の3Dプリンタ「マンモス光造形機」

光造形を用いた3Dプリントは、液体状のポリマー樹脂で満たされた大きなタンクの中で行われます。造形が開始されると、3Dプリンタ上部に設置された紫外線レーザが自動で動き、液体樹脂の表面にまずモデルの一層目の形を描き始めます。タンクの中の液体樹脂は紫外線を当てると瞬時に硬化する性質を持つので、レーザに当たった箇所だけが硬くなってモデルの形が作られるという訳です。

液状樹脂で満たされたタンクの中で3Dプリントを行うのが光造形の特徴。

液状樹脂で満たされたタンクの中で3Dプリントを行うのが光造形の特徴。

この過程は全て液体樹脂で満たされたタンクの中で行われるため、最終的にモデルが完成する際には水槽の中に沈んだような状態になります。造形が全て完了するとモデルの乗った土台が水槽の中から浮かびあがるのですが、その姿はまるで海中から浮上する潜水艦のよう!ぜひビデオでご覧ください。

その他の造形方法との大きな違いは、やはり液体状の素材を使用すること。液体の中で造形が行われるため、造形中の不安定なモデルを支えるサポート構造が必ず付きます。そのためデザインの自由度はレーザー粉末焼結に比べて高くありません。造形後、サポート材は手作業で取り除かれます。

光造形で3Dプリントする際は、モデルに必ずサポート材がつきます

光造形で3Dプリントする際は、モデルに必ずサポート材がつきます

光造形の特長は、出力後の後加工のバラエティが豊富なこと。樹脂をスプレーペイントでマットに仕上げたり、透明樹脂には色をつけて透き通る色味を表現することも可能です。光造形でプリントするモデルは表面がつるつるでスムーズになることから、フィギュアや模型作りにも役立ちます。

透明樹脂にカラー加工を施せば、色が透ける素敵な仕上がりに。

透明樹脂にカラー加工を施せば、色が透ける素敵な仕上がりに。

こちらは2014年のメイカーフェアで展示したスロットカー。出力に使われたプライムグレイは他の樹脂に比べてお値段がお手頃なのも人気の理由です。

プライムグレイで3Dプリント後、メタリックに仕上げられたスロットカー。Space Racer by Tofu

プライムグレイで3Dプリント後、メタリックに仕上げられたスロットカー。Space Racer by Tofu

ポリジェット

出力に樹脂系素材を用いるもう一つの造形方法は「ポリジェット」と呼ばれるもの。造形台の上に噴射された樹脂をUVライトで瞬時に固めていく方式です。この方法で出力される樹脂は光造形よりも更に細かなディテールを表現できるので、i.materialiseでは高精細樹脂と呼んでいます。造形可能サイズは10 cm x 10 cm x 10 cmと大きくないので、細かいデザインを施した小さめのモデルの3Dプリントにおすすめです。

ロストワックス

6つめ、最後の3Dプリント技術は「ロストワックス」。ゴールドシルバーブロンズ真鍮といった金属系素材の出力に使用されます。この方法はワックスを使った3Dプリントと伝統的な鋳造方法を組み合わせたもの。

真鍮で3Dプリントされた、カエルをモチーフにした指輪。Frog Ring by Peter Donders

真鍮で3Dプリントされた、カエルをモチーフにした指輪。Frog Ring by Peter Donders

ロストワックス法は、まずモデルの原型をワックス(蝋)のような樹脂で造形するところからスタート。原型の3Dプリントに使われるのは光造形法です。このときサポート材も自動生成され、原型と一緒に3Dプリントされます。

シルバーその他金属3Dプリントの仕組み

造形が完了したらサポート材を取り除き、鋳造工程に入ります。型のまわりを石膏でかため、オーブンで数時間熱します。外から熱を与えると、蝋に似た素材でできた原型は溶けて外へ流れ出します。

石膏型の中にできた空洞に液状の金属を流し込んで冷却させ、固形化した金属モデルを石膏から取り出したら完成。最後に磨きなどお客様ご希望の仕上げを施します。

3D造形技術について知っておくべき理由とは?

何だかややこしい名前がたくさん出てきましたが、どうしてこのような各造形技術の特徴や違いを知っておく必要があるのでしょうか?それは各造形技術や素材に最適なモデルをデザインするのに役立つからです。

例えば同じ金属であるからと言って、シルバーで3Dプリントできるモデルとステンレススチールで3Dプリントできるモデルは同じではないのです。造形技術が違えば出力用モデルに求められるスペックも変わるという訳ですね。逆に言えば、造形方法が同じ(例えばゴールドシルバーブロンズ真鍮)であれば全く同じデザインのものを違う素材で出力することも可能なので、一度出力可能なデザインが出来上がれば様々な素材のバリエーションが楽しめます。

3Dプリントすることを前提に何かをデザインしているのであれば、デザインを始める段階でどの素材、造形方法で出力したいのかも考えてみましょう。代表的な造形方法の特徴を頭に入れておけば、3Dプリント過程まで視野に入れたものづくりが可能になるのです。素材や使用する3Dプリンタの機種によって造形できるサイズも変わるので、こちらの表で各素材の造形可能最大サイズを確認しておきましょう。

今回紹介した3Dプリント技術の多くは工業用の3Dプリントに使われているもの。こうした技術で高品質な造形ができる3Dプリンタはまだまだ大変高価なものが多いのですが、それを気軽に利用できてしまうのが3Dプリントサービスのいいところ。どの素材がどれくらいの値段になるのか知りたい方は、まずは3Dファイルをアップロードして即時見積もり額を確認してみましょう!

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