Un-industrial (非産業化)

《あッ3Dプリンター屋だッ!!のコミュニティサイト Produced by TOKYO-MAKER》

「プロ」が「素人」に駆逐される日

   

「これを、プロらしくないように作って欲しいのですが・・・」

と、「あッ 3Dプリンター屋だッ!!」に、あるスマホメイカーの企画のAさんがこられました。

「スマホの中の部品だけを販売するから、ユーザーは、3Dプリントで自由な形の筐体をプリントし、自分だけのスマホを作っていい」という企画です。
(電波法などがあるので実験的に進めている企画だそうです、念のため)

Aさんの考えでは
「iPhoneなど、どんなにきれいにデザインされていても、結局、大量生産ですから、周りの多くの人も同じiPhoneを持っています。

人々は、そのことに飽きると思うんです。

そこで、我々は、個人が自分好みの筐体をデザインして、家庭用3Dプリンターで出力して、スマホを組み立てたいと思う人がでてくると考えているのです。
もちろん、我々は、中身の部品を、個人がデザインした筐体に、簡単に、はめ込めば良いように設計された部品を供給しようと思っています。」

これは、なかなか面白い話です。

Aさんは続けます。

「そこで、皆さんに、その考えをわかってもらうために、1台試作を作って展示会に出してみました。

それは、プロにデザインを頼んだもので、スマホとは、似ても似つかぬモノでしたが、凄くカッコ良く、仕上がりも量産品のようなレベルでした。

新しいプロトタイプとして、会場でのウケは良く、デザインが変わっているから、これが欲しいという人も結構いたのですが、私たちが元々狙っていた、普通の素人の人が自分で好みのデザインをしてみたいと思う人はいませんでした。

なぜだろうと考えたのですが、プロが作ったモノは、完成度合いが高すぎて、素人の方からみると、あまりにも、ハードルが高く、自分もできそうと思う気になれなかったのだと思います。

そこで、今日、中野に相談に来たのは、いろいろ、ネットで調べていると、『un-industrial』っていうキュレーションサイトを見て、”あッ 3Dプリンター屋だッ!!”さんなら、素人っぽくデザインできるんじゃないかって思って、相談にきたのです。」

 

 

素人っぽさって何?

そこで、店にいた皆で、「”素人っぽさ”って、なんだろう?」と話し合いました。

偶然その場に居合わせた、「ポルシャ博士の戦車」の辰五郎が、突然、「AKBみたいな感じなんじゃないですか?」と言い出しました。

「どういうことよ?」

「AKBってのは、超美人がいるわけじゃないじゃぁないですか。

昔、アイドルとかスターとかって言われる人は、素人とはかけ離れたスタイルだったり、超美人だったり、普通の人には手が届かなかった人たちだったじゃないですか。

でも、AKBは、沢山いて、その中には、“あの娘くらいなら、俺の彼女も、アイドルになれるんじゃないか?”って、思わせるような顔の人や、足がちょっと太い人もいるわけですよ。ある意味、完璧な美人じゃない。“ちょっと背伸びしたらと、俺の彼女も届くんじゃないか?”って位置にあるのが、『素人っぽさ』じゃないですかね」

「確かにね・・・」

 

iPhoneはスマホの超美人

「確かに、辰五郎が言うことは正しいかも。
スマホで言うと、iPhoneってかけ離れた、超美人だよね。それに、お金出せば、誰でも手が届く。

iPhoneは、1個1個機械加工してるから、金型生産とは違って、理論的には、1台1台の、デザインを変えて生産することも可能なはずです。

1個1個違う形の量産もできることを証明してしまったので、人類が産業革命以来目指してきた、同じモノを大量に生産するという工業化が行き着いてしまったのだと思う。

インダストリアル・デザインっていうのは、インダストリアルっていうくらいだから、まさに工業化によって生まれたものだよね。

同じモノを沢山作る前提で、金型や、量産性を考慮して、いろいろな我慢をしながら、インダストリアルのためにデザインをすることだった。

それを、iPhoneでは、金型や、量産性のことを考慮する我慢からデザイナーを大幅に開放したことで、あれだけのデザインができたのだと思う。もう、他社の金型の考慮をしなければいけないインダストリアル・デザインでは追い越せないね。

ということは、iPhoneは、産業革命によって工業化が始まって以来、初めて到達した最高の美人の量産品かもしれないね。

でも、いくらiPhoneが最高の美人でも、周りの6割ほどの人が持っていると、自分の周りは最高の美人ばかりになって、結局、工業製品のデザインそのものが、どっちでも良くなったと思わないか?

もはや、スマホも、パソコンも、自動車も、性能は同じで、デザインも区別がつかない。
どれでもいい。
強いて言えば、iPhoneの操作感が一番好きだけど、もはやデザインで買っているんじゃない。

iPhoneがいかにスーパーモデルでも、誰でも、いつでも、簡単に手に入るようだと、それが普通になって、結局、飽きちゃうんだね。

iPhoneを見て思うんだけど、デザインなんか要らないよね。こんな無駄な意味のないきれいなRなんか付けてほしくない。真四角でいい。

クルマだって同じだと思う。今、日本で売れている車は、500万台そこそこだけど、200万台が軽で、400万台は、軽も含めて、フィットやビッツ以下のサイズ。

軽は、日本の独特の規格だから、海外にほとんど輸出していない。いわゆる日本のためだけの市場に、車種の数を調べると、80種類ほどもある。洗濯機の形を気にしないように、クルマの形を気にして買う人がいるのなら、500万台ほどの市場の400万台がビッツ以下にはならないと思うけど。

で、80種類の軽を比べてみると、どれもこれも、インダストリアル・デザインだと言って、不必要なRで丸くなっている。もう、そんなRは飽き飽きしてるんだよね。どれを見ても、同じに見えるし、カッコいいとは思わないよ。四角でいいヨ」

赤アイフォン

赤い方は、私がデザインした、真四角の携帯ケースです。
3Dプリンターで作りました。

何のデザイン性もありませんが、私にとっては、本物のi-Phoneより、こっちの方がかっこイイ。メーカーから買うのは機能だけで十分です。

ここまで、話して、結論はiPhoneの形状が究極のプロの仕事であり、軽のダサい丸っぽさまでが、ソコソコのプロってことだよと、話が行き着きました。

 

不特定多数素人の多様な知恵が、プロに勝つ時代に?

では、素人にも手が届きそうで、素人でも、俺もやってみようかって形状って何だ?

AKBは、少し背伸びをすれば手が届きそうな素人っぽさを残したグループを、秋元康氏という最も洗練されたプロが、絶妙に作り出した、時代を読みきった製品だと思います。

プロではない私たちには、そんな計算されたデザインはできません。

話は変わりますが、私はお笑いが好きです。
昔、ツイッターを始めた頃、フォローする相手を思いつかないので、「有吉」をフォローしてみました。テレビを見ていると、毎回、鋭い突込みをいれるので、毎日、オモシロい話が流れて来ると楽しみにしたのですが、何にもオモシロいツイートはありませんでした。

なんだ、お金をもらわないとオモシロいことは言わないんだと、がっかりしました。

先日、高崎山の赤ちゃん猿に、シャーロットと名付けて炎上し、飼育員の方が、「不謹慎でスミマセンでした」と、お気の毒にテレビの前で謝っていました。

その、記事のスレッドに、炎上後5分くらいで、「サルロットにすればよかったのに」とツイートしている人がいました。「プッ!」って笑いました。

有吉より、よほどオモシロい。

私が、最近で、最もオモシロかったのは、例の号泣議員です。
私にとって、あれ以上オモシロいものは、まだでてきていません。
あの時は、2時間ほど記者会見に見入ってしまいました。

山田プランター
号泣記者会見の日に、中村店長にスキャンしてもらった、耳の前に手を当てた私のデータです。それを、毛利顧問が、データで頭をくり抜いて、プランターとして3Dプリントしてくれました。そこに、毛利顧問がネコの餌の種を撒いて育てたものです。

プロの芸人が200人いるとしたら、彼らは、テレビなどで、何を振られても、毎回、60点以上のオモシロいことが言えるプロフェッショナルです。

しかし、プロのお笑い芸人では、号泣議員の記者会見のように、2時間もの長期間、笑わせてくれることはできないでしょう。

コンビニのアイスクリームの中で寝た写真、それに続く、ピザ屋の店員、パトカーの上に乗った写真をアップして逮捕された中学生。

元議員は、ウケを狙ったわけではないでしょうが、今や、SNSの中で、1000万人の素人が、何かオモシロいことで注目されようと、いろいろ考えています。

あの議員もそうですが、彼らはプロではないので、一生に1回しかできない芸かも知れません。でも、素人は、プロの作り上げられた芸より、全く違った次元のお笑いを提供してくれます。

お笑いに限らず、1000万人の不特定多数の素人が生み出す知や、創作物や、芸は、各業界の200人ほどの限られたプロと呼ばれる人が生み出すものとは、次元の違うものを創造し始めていると思います。

 

ヴォーグの表紙になったファッション・ブロガー

bo-gu

ヴォーグの表紙の女性は、イタリアのキアラ・フェラーニさんという、世界トップクラスのファション・ブロガーです。
キアラさんは、27歳だと思います。

学生だった2009年から、「The Blonde Salad」というブログを始めたそうです。

下のインスタグラムは、べサニー・モタさん(米国)という19歳のファッション・ブロガーのものです。
フォロワー数 460万人

ベサニー

この下は、VogueMagazinのインスタグラムです。
フォロワー数 410万人

ヴォーグ

べサニー・モタさんの方がヴォーグよりフォロワー数が多い。

ファッション・ブロガーとは、新しいファッションを発信する人だと思います。
ヴォーグも、新しいファッションを発信する雑誌です。

ヴォーグの歴史を見ると1892年から刊行となっています(WIKIより)

フォロワー数だけでは語れないとは思いますが・・・。
ヴォーグは、四季のファションを、120年間リードしてきたのでしょうが、今では、19歳の素人の方が、四季のファッションに対する発信力を持っているのです。

ファッション発信誌の「ヴォーグ」が、ファッションモデルや、女優などではなく、ファッション発信者の「ブロガー」を表紙に載せる時代になったのは皮肉な変化ですね。

ここでも、プロが素人に脅かされています。

 

結局、プロが発信をリードする時代は終わったようです

dv118051

アメリカで、新聞記者は2015年の「最下位の職業」に選ばれています。
新聞記者の1個上の職業が「キコリ」だそうです
「Newspaper Reporter Named ’Worst Job of 2015′]

知人の大学教授がマンションに住んでおられるそうなのですが、新聞誌のゴミの日に、全く新聞紙のゴミが出てこないそうです。そのマンションの誰も新聞を取っていない。
日本の話です。

私も、朝夕しか来ない新聞は読みません。番組の時間が決まっているテレビのニュースも見ません。
何故なら、全て、前もってSNSで知っている「ニュース」しか流れないからです。

テレビの偏見を持ったコメントなど聞きたくもないのも、もうひとつの理由です。

もはや、誰も報道で選ばれた記事を信じてはいないと思います。
むしろ、SNSの中の真意を見抜く技を磨く方が重要になってきています。

新聞や、テレビ、ファッション誌など、最新の記事やトレンドを発信するメディア、すなわち、スピード勝負のジャンルから素人に負けてきているように思います。

こうした波は、新聞記者などのように、速度感の速いJOBから、プロが素人に駆逐され始めるのではないでしょうか?

素人がプロを駆逐する。この流れは、メディアよりトレンドのスピードが遅い産業にも、次々と降りてくると思います。

ファッションは四季です。年に4回新作が発表されます。
たぶん、最も、サイクルが速い製品だと思います。

スマホも、ものづくり製品では、最もサイクルスが速い製品だと思います。
ファッションのようにクウォーター毎ではないにしても、アップルを除き、半期に1度くらい新作が発表されます。

「素人ぽいスマホを作れないか?」との質問は、ものづくり産業では、最先端のトレンドかも知れません。

不特定多数の素人の声なき多様な知恵が、民意のトレンドを作り出す日が、そこまで来ているように感じました。

その意味では、「これを、プロらしくないように作れるのではないか」と思われた、”あッ 3Dプリンター屋だッ!!”は、最先端だな!」と結論付けました。

「un-Industrial」の中で、一同大笑い。

山田眞次郎

 

 - 3DPrint NEWS, Un-Industrial

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