Un-industrial (非産業化)

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【un-industrial】経営をしたことのない経営学者は経営を教えられないか?!

   

経営者と経営学者は明確に違う

最近の記事で、ホリエモンこと堀江貴文氏が、楠木健教授(経営学者 一橋大学大学院国際企業戦略研究科)に対して、「経営をやったことのない人が経営を教えるな」的な発言をしていた。私も、起業し、経営した経験があるが、この意見には賛成しかねる。「小説を書けない人が文学を教えるな」と言っているのと同じである。

経営者と経営学者は明確に違う。

 

図1

 

図2

 

図4ネットギークより http://netgeek.biz/archives/35351

 

「学問とは、一定の理論に基づいて体系化された知識と方法であり・・・、学問の専門家を学者という」、WIKIでさえこう言っているくらいである。

経営学者とは、経営という千差万別の手法を、経営学という「体系化された知識と方法」に落とし込もうとしている人達である。

堀江氏は、「ライブ・ドア」という事業を起し、経営をされた経験を持つ。しかし、それは、ひとつの例に過ぎない。そこには、なんの理論もなく、体系化された知識にはなっていない。たまたま、堀江氏の稀有な才能によって、うまくいったに過ぎない。

 

経営学は、まだ100年ほどの新しい学問

経営学は、まだ新しい学問のようだ。WIKIをみると、フレデリック・テイラーの「科学的管理法」が始まりのようである。ビジネス・スクール(MBA)は、19世紀末にペンシルバニア大学の「Whrton School」から始まったそうだ。まだ、100年くらいの学問である。

私も、1990年に、「インクス」という会社を起業し、それなりに成長させた経験がある。

米国ノースウェスタン大学MBA「Kelllogg School」や、慶応義塾大学経営大学院「KBS」から、「インクス」ケースとして取り上げられている。私自身、何度も両校で講義を行なった経験がある。

私が、経営学者に会ったのは、主にこの2校の先生方だ。

当初、ケース・スタディーの授業に立ち会って感じたことは、堀江氏と同じで、「経営経験のない学者に経営なんか教えられない」と、私も思った。

しかし、それは、私が、まだ、「学問とは何か」という、その本質を分かっていなかったからだ。

 

ケース・スタディー

MBAのクラスでは、ハーバードから始まったと言われるケース・スタディーが多く取り入れられている。

ケース・スタディーとは、「インクス」の例で言うと、学生は「インクス」の事業体や、歩んできた歴史などを書いたケースを読んで、ある時点を切り出し、「このとき自分たちだったらどうするか?」とグループでディスカッションをする方法だ。

学生たちは、ケースが実在の会社なので、当然、その企業を取り巻く環境や、時代背景、コンペティターなどを調べ上げて、議論をする。私も、何度かその議論にも入ったこともあり、また、「実は、私は、こう決断した」という話もした。

それらのケースは何年か前のものであり、実際には、その企業が、どうなったかという結果は、既に事実として出ている場合が多い。

したがって、ディスカッションは架空のものであり、ディスカッションをしても、全ての答えは正解ではない。

なぜなら、ディスカッションで、「自分だったらこうする」と決めたとしても、それは実際には実効されないのだから、教えている先生も、「それが正解だよ」とは言えないのである。

 

授業と実習

私は、自ら考案した、思考プロセスの分析手法「Process Technology」を東大の授業に取り上げないかと、20人ほどの助教授会のような集まりで話したことがある。

「Process Technology」は、国際学会の査読論文にもなって、特許も取得していた。

実際に多くの企業で、その手法を用いて、熟練者の思考プロセスの分析を行ない、熟練者の思考の連鎖という暗黙知を、誰でもが理解できる、文字と絵で表す形式知に落とし込む実績を上げていた。

私は、自信満々に、思考プロセスの分析方法を説明した。
先生方も、「これはすばらしい方法だ」と認めてくれた。

しかし、「授業にはできない」との結論だった。
「何故ですか?」と聞いてみた。

「あなたの手法は、まだ経験知識に、ちょっと説明を加えたものに過ぎない。学問とは、授業を受ければ、誰でもが、同じことを再現できるように体系的に教えることができるものです。その意味では、“Process Technology”は、まだ、授業として使えるほどの学問体系には至っていないのです。」

「でも、実社会で実践し、事実、効果もでています」

「効果もでているし、役に立つことは認めます。まだ授業としてできるまでの学問に至ってない場合は、“授業”より“実習”の方が良い。」

「実習?」

「機械実習とか、製図実習とかあるでしょう。あれは、講義だけではなく、体でも覚えないと学べないからです」

このとき、初めて学問とは何かを教えてもらった気がする。

 

ケース・スタディーは経営実習?

そう思って、MBAのケース・スタディーを見ると、「なるほど、これは経営実習なのだ」と思えるようになった。確かに実習でも、経営を学び、覚えることができる。

何故、MBAではケース・スタディーという「経営実習」が多いのか?

経営学は、まだ100年くらいしか経っていない。
複雑な要素が絡み合う経営学は、「一定の理論に基づいて体系化された知識と方法」にまでは、まで完全には至っていないのだろう。

じゃあ、経営経験のない経営学者が不要かといえば、そうではない。

経営するという千差万別の経営手法を、「一定の理論に基づいて体系化された知識」にまとめることができる能力は、経営ができるという能力とは全く別のものである。この追求は、多くの経営学者によって永遠に続くけられなければいけない。

「こう来た球を、パッと打つ」とバット振って見せて指導する長島選手のように、多くの経営経験者が、自分式の経営手法を語れても、それを、誰でもが再現できる一定の理論に基づいた経営学としてまとめ上げることができる人は、ほとんどいないだろう。

「経営もできない奴が経営を語るな!」という前に、「経営学にまでに落せ込めない奴が、経営学者について、とやかく言うな」と言いたい。

ドラッガー先生も、経営の経験はない。

ドラッガー

 - Un-Industrial

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