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【本質を明かす術】ラピットプロトタイプした「紙コップ」

   

日本大学藝術学部デザイン学科4年生のスギハラです。
今回は、「本質」を探る行為についてわたしなりにまとめ、紹介させて頂きます。

 

前回の投稿 –––「Now is the fab time!」http://ah3dprintshop.com/1941

 

本学科インタラクションデザイン分野では、教育、クラウドファンディング、製造、普及活動など多岐に渡る手法を用い、個々が目指すこれからの社会を実現させるためのプロジェクトを、講義を通して作りながら考えています。
「何を、どの様に」つくるのか思案する前に、「何故、何の為に」生み出さねばならないのかと思い、その揺るぎない必然性からものを作り出そうとするプロセスに特に重きを置く分野です。

 

昨年度から、7月までの前期講義の演習では 石黒猛 さんに教わっています。今春から2年目の授業が始まり、昨年度3年生で受講していた現在4年生の私を含む数名は、下級生に混ざって聴講をさせて頂いております。本質を探る術を身につけるべく、早速2週目から手を動かしました。お題は「紙コップ」。

 

1

 

まずは実物を見ず想像しながら、思い行き着いた本質を書き出します。5分後、最適な本質を受講者全員で共有。出揃ったのち、他人の意見で自分の心が動いたものに挙手していき、より共感を呼んだ項目を調べます。

 

8

 

次は観察です。ペアの相手が紙コップを用いて飲む姿を見ながら、その人が紙コップを持つシーン設定を聞き込み、用紙にどんどんメモを取ります。時間は10分。

 

2

 

そして再度、ボードに書き込んで全員で共有します。観察をしていない他人のクセを知ることができるし何より面白いので、この時間は自分の観念を広げるためにもかなり大切です。

 

7
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以上を加味し、紙コップに新たな価値を与えるべく試作をつくります。制限時間は15分で、最後に出来上がったものを掲げながら簡潔にプレゼンテーションをして、終了でした。

 

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本質とは、言わずもがな《それなしにはその物が存在し得ない性質》という定義を持っています。この講義では、「何故、何の為に」ものをつくるのかと問う前に、「それは何物(者)か」と核に迫り、自分なりの答えを導く手法を皆で考えながら学んでいます。ですので正しい解はありませんし、求められてもいません。正誤ではなく、以後の各々の制作活動で活かすことの出来る「本質を明かす術」を身につけようと琢磨しているのです。

 

「本質」は化かすことが出来ると考えています。いまの当たり前を再考し、本性を暴いて、より純度を高めた質の高いものごとがつくれると思っています。そこで求められる技巧が、立体造形の技能であり、グラフィックのセンス、デジタル加工技術であると言う様に、デザインの専門性を発揮出来るのです。インタラクションデザイン分野は、個々がそれぞれの技を持って集まった多様性に富む領域です。なので、石黒猛さんの講義は本当に楽しいのです!

 

最後に、先日の授業で私と、友人が思い行き着いた「紙コップ」についての本質と、ラピットプロトタイプした「紙コップ」を紹介させて頂きます。

 


 

「匿名性」
永島千寿流(日本大学藝術学部デザイン学科4年生)

 

IMG_0055

 

私たちは様々なモノを置換しながら生活をしている。より心地よく、早く、安く、あたたかく、やわらかく…自分が良しとする方向へと無意識で置き換えを繰り返す。では何に重きを置いて置換をしているのだろうか。

 

例えば、時間を知りたいのならば何を考えるだろうか。腕時計?iPhoneのロック画面?陽の傾きでだって凡その時間はわかるだろう。私たちがわざわざ腕時計を選んで腕につける理由とは何だろうか。本当の「腕時計をつける」ことの意味は、時刻を知るということではなく、きっと他のところにある。

 

私たちが「何か」を求めるとき、その「何か」が代替可能/不可能であるならば、その理由はなんだろうか。その理由が、その「何か」の内包している本質であると私は考える。「何か」をそれたらしめているものとは何か?そこさえ同じならば、”表層としてどういう形をとるか”は然程重要なことではないのかもしれない。

 

今回、これを紙コップに対して考えた。

 

紙コップの本質とは何か?結論から言うと、私は匿名性であると考えた。紙コップの使われ方や安さ、最期には捨てられてしまう運命など、思うところは沢山ある。器であること。そのもの自体が白いこと(その場で示された紙コップが一般的な白いものだったのもある)。何か(飲み物、食べ物、絵の具…)を入れるとその痕跡が残ること。同様に口をつけたり手にしたりするとその痕跡が残ること。少しでもその痕跡を感じたら多くの人はその紙コップを手にしないであろうということ。

 

そしてまっさらな紙コップを誰かが手に取り中に何かを入れた瞬間、その紙コップは白い紙コップから個を得た紙コップになる。ただの、文字通りの器から内容物を得たことによって瞬間で変身してしまうのだ。私はこの現象に”名付け”に近いものを感じた。お前はどういう存在で在りなさい、と運命付ける行為。

 

同時に、その手を付けられた紙コップたちを並べたときの、「誰かが使っているものではあるけれども誰のものかまではわからない、そして一人で複数個所持することができ、最終的には捨てられる」という一連の様子を想像した。それはつまり”それは何物(者)かではあってもその名前は一見わからない”状態なのではないかと思った。ここに、紙コップの本質についてを無名性ではなく匿名性とした理由がある。

 

ここまで想像した上で、誰からも手を付けられていない白い紙コップを立ち返り思い浮かべる。もしもこの紙コップが元々人の手垢や気配を感じるような加工や絵が印刷されていたならばそれを手に取ろうとした人は何を感じどんな反応をするのだろう、というのが今回のプロトタイピングで作った、「最初から小汚い紙コップ」である。

 


 

「受けて立ち、つぶされる」
杉原海帆

 

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都合の良い時だけ利用される “ヒト” のような存在。とにかく安価だから雑な扱いを受けるし、取って代わるヤツはいくらだって居るから大切にされない。ペンで落書きされ、所在無いときは手遊びの道具となり、縁を噛まれ、終いにはぺしゃんこに潰されてゴミ袋の中へ放り込まれる始末。

 

純白の身形で脆く儚いその器はそんな命運を背負って生まれたと分かっていても、いつでも愚直に飲み物を受け、口に運ばれ尽くすまで中身をこぼすまいと立ち続ける。時たま、潰されもせずその場に置きっ放しにされようとも、潰されるという終焉を、まるで悟っているかの様だ。

 

––– と言う具合に、紙コップにひどく共感した私は、彼(もしくは彼女)に抗う力を与えました。言い換えるとするならば、グレさせました。

 

元から腹部がクシャっと凹みよじれている紙コップです。潰されるのなら、潰れておけばいいのだ!まるで「潰されてますけど?」と言わんばかりにひねくれながら、本来求められている液体を注がれる機能は損なわない。既に傷付いているものを更に痛めつけることは、抵抗感がありますし善意が発動してなかなかしにくいものです。紙コップは不動だけれど、少しでもひとの感情を揺るがせたり行為を変える「わざ」を持てば、新たな価値が生まれると思います。

 

ここまで勝手に感情移入すると、紙コップに表情すら感じることが出来てくるから不思議です。いくら、土に還るからとか燃えてゴミにはならないからと言って乱用するのではなく、飲み物を「受けて立つ」機能を持っている大切な存在として使用したいと改めて感じました。

 


 

「紙コップ」の本質は何であると思いますか?機会がありましたら、是非聞かせて下さい!

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